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極東最前線直前

最近どうも腹の具合が思わしくない、と思っていたら、今日になって遂に派手に下痢した。

早起きしたのは午前中の内に免許を再発行しにいかなければならず、更に午後にはあの極東最前線が待ち構えているからなのだ。今日は仕事は休みをもらっているのだった。

ライブのコンディションを考え、朝はお粥にして早速府中の免許工場に原付で赴いた。免許を再発行するのは先日財布を落としてしまって、財布の中に入れていた定期もそのまま失せてしまったからだったが、府中までの原付は無免運転なので本当はNGなのだ。

免許工場で定形の写真を求められたので、オレは事前に家のパソコンで出力しておいた写真を出したら、担当官が早速ルーペのようなものを取り出して写真を拡大し一瞥し、「これなんですけど」と写真を拡大したルーペをオレに近付けて「わかります?これだと解像度が足りないんですよ。あそこに照明写真機があるんで撮ってきてもらえます?」とたしなめるように言うのだった。

オレは閉口した。確かにルーペで拡大すると粗いようではあるけど、身分を確認する時に写真をルーペで確認するようなことがあるのだろうか。拡大などしなければ、オレが持ってきた写真で充分身分証明は果たせるじゃないか。咄嗟にそういうことを考えて腹が立ってきたが、こじらせても答えは変わらないので、ちょっとふてくされた表情と態度で「分かりました」と吐き捨て、照明写真の箱にトボトボ向かった。

照明写真というのは何とつまらないものだろう。オレは今まで大分職を転々としてきたので、この箱には何度となく出入りしているのであるが、楽しい思い出があるはずもなく、むしろ懺悔室に自ら入るような気分になってさえくるのだ。それにこんなつまらないものを拵えるのに700円も搾り取られるのはどういうシステムだろう。

オレはつまらないのと、腹が立っていたので、せめてシステムに対して反抗心を示すために、とびっきりの悪辣の顔で写ってやろう、と企んだ。鏡にむかって一生懸命悪い表情を作って頑張った。出来上がった写真をみると、実に嫌な表情をしてる。それをみて満足するというよりは情けなくなってしまった。

(こんな表情の免許は嫌だナ)と思って後悔したが、実は免許に掲載される写真はこの後、それとは別に取ることになっていたようで、結局まともな顔を作り直して写真撮影をすることができた。

免許を更新するなんて、何て面倒なことだろう、と思っていたが、つまずいたのは写真のゴタゴタだけで、写真が終わるとすぐに引渡場所に案内された。引渡場所は別の棟になっていて、渡り廊下のようなところを通ると、脇の敷地で原付の講習会が行われているのだった。横一列に並んだ受講生が50ccの原付に跨がり、教官の掛け声とともに一斉に走り出す、ということをやっているのだが、原付に乗るのにそんな講習を受けた覚えはないので、何だかバカみたいだ。自動車の普通免許を取ってる人は原付に乗ることを許されているのでオレは講習は受けなかったのだ。ブロロロー、とうなりをあげてスタートダッシュの練習をさせられている受講生は6名。そこになんと教官が3人も4人もいて、何やら大きな声を出して指導している様子に呆れてしまった。

引渡場所までは(免許の再発行など案外簡単だ)と思っていたのに、引渡場所での待ち時間はなかなか長かった。がらんどうのような、体育館のような殺風景な空間にパイプ椅子が整然と並べられていて、まさに教会のようだけど、時々、前方の窓口で免許交付者の番号と名前を棒読みで読み上げてるのは神父ではなく、警察みたいな制服を着たオッサンらとオンナらで、ちっとも有難くない。棒読みだと飽きるからか、彼らなりに抑揚をつけて読み上げようとしてみたり、名前を間違えて読んでしまって「え~失礼しました」などと言ってる様子は有難くないが悪いヤツらではなさそうである。

自分の免許の再交付が読み上げられるまでオレは本を読み始めたが、すぐに眠くなってしまい、眼を閉じてはしばらくして本をひろげ、すぐに眠くなっては本を閉じて眼も閉じて、そしてまた本をひろげてみたりしていた。眼を閉じてる間、今日の極東最前線のライブでやる予定のラップのパートを思い出しては繰り返し念じてみたりもしていた。

極東最前線に出られるなんて、渋谷クアトロに出られるなんて、いったい今まで想像していたことがあるだろうか。待てよ、いや、そうだ、オレは中学校の時、ロックンロールに頭をぶん殴られたあの時。あの時はクアトロのような、そんな風な大きなステージでプレイすることをあたかも現実にやってくるかのように想像していたのだ。ロックスターになって大きなステージに立っている自分を想像して熱くなっていた時があったのだオレにも、ということを思い出すと何だかまた胸が熱くなってきた。

思い出してみると、中学生の時に極まったロックスターへの熱は、しかし高校生になってアングラ志向にみせられてからは、なりを潜め、大きなステージの夢は別世界のハナシ、と忘れようとさえしていくようになっていったのだ。それでそのままバンドをやり始め、大して人気も出ないままズルズルとこの歳までバンドを続けてきたのだ。そこへ、忘れていた夢が、今になってプカプカと風にのってやってきたのだ。何て面白いことだろう。

いい想像をしながらうとうとと相変わらずオレは、オレの免許が交付されるのを待っているのだが、なかなかオレの番号は呼ばれないのだ。引渡場所の窓際にIC免許の登録内容を確認する機械が何台も、パイプイスと同じように整然と並んでいて、新たな免許を受け取った人はその場で登録内容に間違いがないか照合しなくては出られない流れになっているようだ。大体IC免許なんてのはナンセンス極まりないので、(そんな面倒な作業までやらせて、国は…)と思うのだが、我々は登録内容に間違いがないかまで確認させられなければいけないのだ。

ようやく番号が呼ばれ遂に免許が再交付されたのだが、3600円と写真代700円を取られたので、余計に税金を払っただけのようで悔しくてたまらない。「IC免許の登録内容をこちらで必ず確認してください」と係の警察みたいなおばちゃんに言われて、ハッとしてオレは渋々確認機に向かうのだった。
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