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爽やかな春からあっという間に…

爽やかな春からあっという間にジメッととした梅雨にむかって日本は2012年を迎えている。オレが今やってる仕事はハウスクリーニングのような類の労働で、頭は使わないので気が楽だが、これから夏場は辛い季節となりそうだ。

興奮と感動の極東最前線から早くも一ヶ月半が過ぎ、オレはもう気が抜けてしまった。その日のライブは大盛り上がりだったし、オレは(極東最前線をきっかけに赤い疑惑の人気に火がつけば…)と夢想したものだったが、やはり日常に戻ってきて、そのうち本当に日常に戻ってしまった。日々風呂やトイレ掃除をしながら眼の前の壁やタイルと睨めくらをやって、労働ということについて再び考える日々を送るのだった。

日常に戻ったといってもその日常には結婚という得体のしれないものが待っていた。得体のしれないといっても、その「結婚」というやつを彼女に持ちかけたのはオレなのだから恐れることは何もないのである。

母がガンでこの世を去ってからというもの━━もう7年くらいになるが、オレは「家庭」というこれもまた得体の知れないものへの憧憬を抱くようになってしまった。それまでは、親には反対されていたが、バンドを、このまま続けられていればそれでいい、くらいにしか考えてなかったのかも知れないし、もしバンドが原因で結婚できないような人間に自分がなってしまったとしても全然構わないだろう、と何となくそんな風に考えていたので、「家庭」を夢見るような自身の心境の変化は自分を驚かせた。

それからしばらくして松田クラッチが結婚した。松田クラッチとは高一の時からの友達で、赤い疑惑でもずっとオレの隣りで低音を鳴らしてくれている親友なのだ。クラッチの結婚願望は沸々というよりも、周囲のトモダチの結婚状況などに刺激されて急激に起こったもののようだった。オレは(先を越されたナ)と思った。ドラマーの沓沢ブレーキーがどう思ったのかは知らない。

時は流れてついにオレも「結婚」という、その得体の知れないものへ突撃してみることになった。それを決意させるに至る愉快なパートナーと出会えたからかもしれない。結婚を決意してから、今度はどうやってプロポーズするか、ということがオレを悩ませるのだった。やっぱり結婚指輪を渡す、っていうのがセオリーかな、などと考え、クラッチが結婚指輪を渡したらしいということを思い出し、クラッチから「どこに買いに行っていくらくらいだったのか?」などを聞いてみるのだが、そもそも結婚指輪というものは必要なのだろうか、と考えまた頭を悩ませるのだ。

オレは、その頃接触する機会のあった既婚者のトモダチに「結婚指輪はどうしたか」または「結婚指輪は必要か」ということに関して質問攻めにし、究極結婚指輪は気持ちだから、指輪じゃなくても記念になるものならいいんじゃないか、また、最近は結婚指輪を渡さない人も多いらしい、という情報などを得てさらに悩んでみたが、あまり悩んでいるのもどうかと思うので結婚指輪なるものを買ってみることにしたのだ。聞込み調査でも明確になっていたことだが、もはや「結婚指輪は給料の3ヶ月分」という定説は日本が浮かれていた時代のジョーダンのようなことだったのだ。だからオレのような貧乏人でも何とかなるということは分かったのだ。

3月のとある日、オレは大好きな御岳山の、山頂付近にある長尾平━━名前が一緒なのは偶然である━━で、彼女に指輪を渡しプロポースした。生憎の曇り模様だった空が一転して晴れ渡り、彼女は泣いて喜んでくれた。オレは結構長い間、(プロポーズするなら山頂で)と決めていたのだ。

また、4月のとある週末、オレは彼女の生まれ故郷である山形県の実家にゴアイサツに出かけた。彼女の親戚の強烈な山形訛りのおっちゃんに何やら熱心に話しかけられたが何も分からなかったり、これから「お父さんやお母さん」になるお二人が滅茶苦茶優しくて心癒されたり、山形の、360度美しい山々に囲まれた盆地の風土やフードを堪能したり、オレのお嫁さんになる人が家族の前で操る方言━━特に同意の「んだんだ」などに心萌えたりして、短い滞在にして心ゆくまで楽しんでしまった。

帰宅すると今度は、オヤジと結納、または会食をどうするか、などについて話し合い、彼女とは新婚生活を始めるための住居選びを始める。そして毎日ハウスクリーニングの仕事に出かける。その職場には面白い同僚が沢山いて、この仕事を紹介してくれたOJをはじめ、一癖も二癖もある人や外国人など、毎日下らないハナシや為になるハナシなどを交わしながらバキュームをかけたり━━この職場では掃除機をバキュームと呼ぶ、モップで床を磨いたりするのだった。

夜になって仕事が終わると帰宅してパソコンをいじったりギターを弾いたり、また下北沢の気流舎に行ったりなどしながらつまらないような、面白いような日常が続いていく。昨年の3月11日以降、世間は変わったようで変わっていないし、自分は変わったようで変わっていないけど、やっぱり確実に変わったとも思える。クラッチ夫妻は放射能汚染を危惧して諏訪に移住してしまった。バンドも今までのようにはいかなくなるかもしれない。(極東最前線をきっかけに赤い疑惑の人気に火がつけば…)と思ったことも確かだし、(極東最前線に出られたのだから、クラブクアトロに出られたのだから…)とも思えてくるのも嘘ではないのだ。

今日は夕方に近所の不動産屋で偶然発見した新居の契約手続きをしに行く予定で、今隣りではオヤジがパソコンにかじりついて何やら仕事している。オレは今日休みだから久しぶりに近況報告ならぬ駄文をしたためている。空は曇っているし物憂い午後だけど、不動産屋での手続きがスムーズに行ったら彼女とインカ帝国展を観に行きたい、とも考えているのだ。
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