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EKD 2nd アルバム 「fantasma」 発売

これは昨日Kさんが見せてくれた動画、
アルゼンチンのゲットークンビアバンドのライブ映像さながら、
自然と解放された空間かもしれない。
オレの脳みそはそんな感覚に陥りながら身体を揺らしていた。

EKDのライブが始まったのはもう空が白み始めた明け方であった。
しかしオレ達はこのEKDのライブを見るために眠い眼をこすり待っていたのだ。
未来世紀メキシコの面々やアメちゃんや、ブレイキーや、
いつも顔を合わせているトモダチがこのEKDのライブを心待ちにしていたのだ。
そしてみんな最後のジプシージョーで日頃の鬱憤を晴らす準備は整っていたいたのだ。

最後のジプシージョーが始まると自然とモッシュピットができて
周りの、初めてEKDを見るような連中もつられて踊り出した。
オレも興奮してきた。
後ろから踊りながらアメちゃんがやってきてオレの肩を組んだ。
いつもはこんな風に真ん中に出てくるような人じゃないのに…。
これでオレはいっそうハイテンションになった。
激しく身体を動かしていると
今度は後ろからミスターがオレの腰のあたりに手をまわし、
大きな声で囁いた。
「げんちゃん、マイク!」
ハッとしたオレは我を忘れステージによじ登って
颯爽とギターをひくEKDの前のマイクを掴んで咆哮した。
観客は相当に盛り上がっていてオレは調子にのって叫んで、
そしてステージをかけおりるとまた、今度は声をあげて踊った。
曲が終わりステージ前で踊っていたみんなは抱き合うような、
幸せな空気に包まれていた。


オレがEKDを知ったのは昨年の秋頃だった。
その音を初めて聞いた時の衝撃は今も忘れられない。
すぐに脳裏にCLASHとMANU CHAOの存在が、
うっすら現れはしたが、その音は圧倒的に日本的でありオリジナルであった。
そしてストイックでワイルドでマイルドでメロディアスなギター。
なのにその全体はとても安っぽい音をしていた。

その頃オレは日本のバンドシーン、特に同年代のバンドに、
シンパシーというものを感じることがほとんどなかった。
だからこのEKDの音を聞いた時の心の動揺は相当だった。
丁度東京ファミリーストーリーのレコ発を企画中だったオレは、
すぐに、CDに書いてあったアドレスにメールを送りコンタクトを図った。

結局その行動がきっかけとなりEKDというミュージシャンと知り合い、
EKDを取り巻く多くの頼もしいクルーと知り合うことになり、
これまでの間沢山遊び、いろんなことを話した。
一緒にライブをやってそうして付き合って行くうちに、
やはりこのEKDというアーティストの才能と眼のつけどころには、
いつも尊敬の念を払わざるをえないセンスのよさを感じた。

EKDと知り合った頃、オレは絶望のどん底にあった。
今振り返るとどんだけの絶望だったのかもうよく分からないのだが、
とにかく絶望のどん底にいたのだ。
毎日、毎日、歯を食いしばる日が続くようなこともあり、
精神的にかなり消耗してしまっていた。
そしてオレはスーツを着てバビロンのオフィスに通うという、
自分は決してなるまいと想像したサラリーマン体験をしていた。
そこでオレは例えようのない焦りを感じながら働き、
その間ずっとEKDのメロディーとビートが頭から離れなかった。
頭から離れなかったというより、正確には、
あるいは意識的に自分の脳が鳴らしていたのかもしれない。
それはオレの、当時のチムレンガといってもよかった。

オレの大好きなミュージシャンでトーマスマプフーモという人がいる。
自らの音楽をジンバブエの大衆蜂起を鼓舞する音楽として、
バンドでずっとメッセージを唄い続けている。
彼の音楽を知ってから、そのチムレンガミュージックをオレは聞き続けた。
特に自分が凹んだり、壁にぶち当たった時には必ず聞いた。
オレにとって、マプフーモのボソボソと呟く地味なボーカルと、
印象的に飛び跳ねるハチロクのビートとサウンドのアンサンブルは、
静かな怒りと、消えそうで消えないしぶとい光と勇気をオレに与え続けた。

そしてEKDの音楽は、マプフーモが持つ音楽の特性に、
どこか通底する反抗性と美しさをひめていた。
だからオレはEKDのメロディーに随分と鼓舞されて、
その当時なんとか後ろ向きにならないように踏んばっていた、のだった。

EKDの2ndアルバム「fantasma」が先日リリースされた。
日本で今最も注目すべきラジカルな音楽である。
是非多くの人が聞いて何かを感じてほしい作品である。
そして是非多くの人とEKDのライブを楽しみたいモノである。


Fantasma
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