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ライブが終わって

空が白んでいる。
昨日は日食だったらしいけど、オレの昨日には
とくに何の影響もあたえなかった。
ライブに来てくれたコが「今日日食を見ましたよ」
というのを聞いたくらいで。

我々やライブの出演者達と、
我々やライブの出演者達と同じタイミングで帰る数人の客が
それぞれ活性化した、または沈静化した脳をひきずって、
ライブハウスの前でたむろ、ないし帰り支度。
大きな荷物を抱えて地べたに座り込む者もいた我々は、
歌舞伎町のドブ臭い街路のただ中で、
まるで難民キャンプのようであった。
メキシコ組はタクシーを呼びつけ、
パチュカブラスはバイクで、
オレらはそれを見送り、
これから名古屋方面に帰るというタートルの面々と挨拶を交わし、
JR新宿方面へと歩き出した。

「ちょっと立ち食いそばでも食って帰ろう」という、
ブレイキーかクラッチか、どちらかからは判然としない提案をうけ、
別に食べなくても済むのだが、という徒労然とした、
「僕らのパーティー締め」を行なうべくそば屋に寄った。
一緒に帰途についたトモダチを含め、
四人全員がひやしたぬきそばを食った。
クールダウンへの近道はそれしかないという満場の一致だったようだ。

ちょっと、オレのタヌキ、少なくない、とオレの隣のブレーキーが、
その向こうのトモダチに向かって小さく
(しかし店員には聞こえるような音量で)呟いている。
ブレーキーがこのようなダメだしをすることは珍しいことではないので、
オレは反応せずに眼の前の冷やしたぬきに集中した。
昨日の晩ライブハウス付近のそば屋の前を通った時に、
久しぶりに、カツオ出汁のそばを無性に食べたくなったことを思い出す。
やはり、たとえフランチャイズ立ち食いだろうが、
どうやらカツオ出汁を欲していたには違いなく、
想定外の満足感を350円で得た喜びがあった。
さっきは食べなくても済むと考えていたのに…。

駅で皆と別れてオレは中央線快速高尾行きに乗り込む。
まだ朝早い、しかも下りの電車なのに座れない。
開閉ドア脇の手すりの隅に
両肩に重たい背中のバックパックを下ろし、
右肩に食い込むギターを下ろし、
大西巨人「神聖喜劇」の第四巻をひもとく。
酒を飲んでいたらこういう場合、
出発して1駅か2駅でもう眠くなり船を漕ぐようなことになるが、
あまり酒を飲まなかったからか本の内容に割合ひきこまれた。
それでも三鷹のあたりで眠くなったので船を漕がぬためにも
本を閉じ、外の景色を眺めた。
昨日は日食だったそうだが、生憎の曇り。
そして窓の外はいまだに分厚い雲のせいで
カラフルな感じはなく、ただ単に朝が始まったという風だ。

いつも停めてる駐輪場に行くともうシルバーのスタッフが動き出していて、
オレは昨日100円を払ってここに自転車を停めたのだから、
スタッフがいると、今日分としてもう100円払わねばならぬかもしれない、
というような心配をする。
財布から駐輪場の回数券を出してシルバーのスタッフに
「昨日停めたんですが」と声をかける。
するとオレの自転車は今日の午前10時までは昨日払った100円分がきくので、
追徴はないという。
普段注視したことのなかった、スタッフがいつもオレのハンドルに巻き付ける
オレンジの短冊には、よく見ると停めた日付だけでなく、
停めた時間までをも印字してあったようだ。
「24時間大丈夫なんですね」とスタッフに安堵の嘆息をもらし、
後輪上部に施錠したチェーンの鍵を外しにかかったが、
スタッフはオレの呟きが聞こえたのか聞こえなかったのか、
それに対する何の反応もなかった。

半径の極端に小さい自転車(何と呼ぶタイプなのか分からぬ)のタイヤは
オレとバックパックとエレキギターの重みに明らかに軋み、
オレの身体と同じくらいに悲鳴を上げているようだ。
別に昨日のイベントで転んだりしたわけではないのに、
━━ミスターは昨日のイベントで階段から落ちて
背中をしたたかに打ったそうだが━━、
どうも身体の節々が痛むようで、
何でだろうと考えたら、そういえば、
オレはEKDのライブ中モッシュをしてかなり楽しんでしまったことを思い出した。
普段は痛みを感じないようなところが打ち身のように痛んでいるのはそのせいらしい。

やっとこさ帰宅すると、もう姉は仕事にでかけたらしく、
父は居間で新聞を読んでいるところだった。
父に挨拶をすると、おお、今日は仕事はどうすんだ、
とどこまでの誠意で心配しているのか分からぬが、
そんな風なことを言うので、今日は休みもらったんだ、
ということだけ伝え歯を磨きシャワーに入りベッドに倒れる。


何か夢を見ていたような気もするが、
ドンドン、と決して穏やかではないノックの音で目が覚める。
意識と自分を無理矢理統一させて事の自体を呑み込もうと、
そんな準備を得る間もなくオヤジが、
「悪いんだけど、東小金井まで送ってくれないか」
「あぁ、分かった、ちょっと待って。」
頭はまだはっきりしないが断る理由はなさそうだった。

頭は軽い訳はなく、しかし決して重い訳でもなく、
まだあまり寝てない気もするけど午後1時。
5時間くらいは眠りにつけたようである。
父がギターとキャリアのついた荷物を車に積み込む。
今日は寿司deバラライカというイベントに出る日だったようだ。
寿司を食いながらバラライカを聞くという、
いまだかつて聞いたことない謎のイベントなのだ。

オヤジを東小金井に送って帰ってきて、
オレは昨日のライブで量産された洗濯物の数々に気づき、
洗濯機を回した。天気は悪いようだけど、
最悪近所のコインランドリーの乾燥機で、
一気に渇かしてしまおうという魂胆だった。
洗濯機が回っている間、オヤジがさっき車の中で、
悪くならないうちに食っておけ、とオレに指示した、
また、レトルトはやっぱ旨くないな、などとも感想を付した、
オヤジがレトルトのルーをもとに作ったというピーマンの牛肉炒め、
それをレンジで温めて食べた。

洗濯物をベランダで干していると、遠くの空を旋回しているのであろうか、
ヘリコプターのプロペラの低音や、近くの学校、
━━恐らくオレの母校田無第一中か田無高校の、
キーンコーンカーンコーンというチャイムの音やが、
何故か無性にオレの耳にジンワリひびくようである。
そして今度はシトシトピチという葉を打つ雨の音!
やはり降ってきてしまった。
今干した洗濯物をまたごっそり物干から外し、
重宝しているナイロン製のデカい土産袋に詰め込む。

母が生前使っていたいたであろう花柄の傘を拡げマンションを出る。
つっかけた雪駄に面した足の裏に、
コンクリートの小さな砂利が入り込んだりし、
足の膝から下は容赦なく濡れる。
フランスベッドの工場の脇を通りながら、
昨日のライブの反省点などを考える。
あなたの言葉の並べ方が結構好きよ、と打ち明けてくれた、
いつもイベントで会うアネゴが、
オレの体癖を指摘して一緒に頭に手をのせたことなんかを思い出す。
少しテンションの低かったリョー君やいつでもいい顔をしてるレオ君のことや、
また歌舞伎町の路上で「オニイさん、マッサージ、いいよ~」と連呼して
客を引くアジアのネエちゃんに腕ごと抱えられ相当強引に、
どこかへ連れて行かれそうになったことなども思い出す。
首の後ろが異様に痒くなってきた。
頸椎の左と右とそれぞれかゆみがある。
どうやらさっきベランダで洗濯物を干した時に蚊に刺されたようだ。
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