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時は遠慮なく流れゆき

会社の先輩にもらったCDを聞いている。多分アメリカのアンダーグラウンドシーンのバンドでグランジっぽい音から音響、ポストロックを経過してワールドミュージックまで取り入れる野心的なバンド。時々琴線をくすぐるポップなメロディーが胸をかきむしるが、全体で聞くと疲れる。リスナーは勝手なモノである。

ブログを更新しようと思っているうちに時は刻一刻と流れ、日常の雑事に浸っているとなかなか立ち止まることができず、息継ぎをするのを忘れてしまう。今日みたいに何も予定がない日曜日などを突然迎えると、さあ、オレは何をするんだったっけ、と思い、日常やり忘れていたこと(例えばこのブログの更新など)をやろうと思うんだけど、いざそういうチャンスを迎えると面倒くさくなって結局終わりの見えない部屋の片付けなどに没頭し始めたりする。人間はあまのじゃくな生き物に違いない。

昨日は松田クラッチのおめでたい転居のお手伝いで、昼から夕方まで荻窪と西荻を行ったり来たりして冷蔵庫や洗濯機や机、椅子、その他あらゆる生活必需品を運び込む、という作業に従事していた。我が長尾家実家の車はトヨタのノアというゆったりしたワゴン車であるため、赤い疑惑のツアーワゴンとして愛用せられ、そしてこのような友人の引越の手伝いでも幾度か重宝されてきたのであり、昨日もその例に漏れずという具合だった。オレの他に大学の友人やその嫁やが集まった。

引越の最中よくよく考えてみると、こうして松田クラッチが目出たいことになってしまった今、ここにいる人間の中で所帯を持たないのはオレだけであることに気づき、何だか刹那的にナイーブな気持ちになった。オレはそんなことで自分がナイーブな気持ちになるとは想像したことがなかったが、実際にそんな気持ちに捕われて情けなかった。

松田クラッチの新居は安っぽいスペイン風住宅といった感じで微笑ましく、その代わり陽当たりは相当に良好で、そして空の広さと住環境という点では恵まれていた。目の前にぶっきらぼうな空き地があり、そこはほぼ正方形なのにちょっとした傾斜を持つ地形にあり、公園自体が3次元で歪んでいて、まともな公園とは思われない。誂えられた動物型の遊具も疎らで、位置取りも不明確であり、何の愛情も感じられない。しかしそのぶっきらぼう具合は松田クラッチには好ましかったのだろう、オレもそれはすぐに共感できて「こんな公園」が近くにあるっことは羨ましかった。クラッチは「ここならバーベキューやっても怒られなさそうじゃない?」と得意気だったが、オレも含めそれに難色を示さない者はなく、それでもクラッチはその夢を捨てようという諦観はみせなかった。

その引越の帰途、オレは引越現場から極至近距離にあるオヤジの職場(今年度をもって退職予定の)に寄ってオヤジを拾い、一度実家に帰宅し、改めて出直してオヤジとともに西部新宿線下りに乗って東村山へと向かった。東村山に旨いらしいそば屋がある、という情報をゲットした姉がオレの誕生日祝いをそこでしようと発案していたのであった。東村山駅を降り、一足先に店に到着しているはずの姉に店までの道のりを携帯で聞き、分かった気になってオヤジと歩き出したが結局迷ってしまい、東村山西口線路沿い所沢方面の路上でオレとオヤジはややうろたえねばならなかった。

近くにあった昭和風の酒屋に入り道を尋ねようと思った。レジには人がおらず店の奥(酒屋さんの住居)からおばちゃんが出てきたので「道をお尋ねしたいのですが」とオレは助けを求めた。すると別のおばちゃんがもう1人出てきてオレは少し緊張した。
「土屋というそば屋がこの辺にありませんか」
「ツチヤ? さあ、キクヤじゃなくて?」
「はあ、ツチヤ(土屋という漢字を思い浮かべながら)だと思います」
「キクヤさんならこの先にありますよ。」
「有名なところだと思うのですが」
「おいしいと評判ですよつけ麺の」
「はあ、そうですか」
つけ麺? おかしいなと思った。オレ達は中華じゃなくて日本そばを食いに行く筈だ。だけどこの先に川があるというし(姉からは川の側だと聞いていた)とりあえずそこまで行ってみようかと思い、お礼を言って店を出る。店を出ると今度はオヤジが姉と携帯で話している。酒屋の人に聞くより姉に電話した方が早いと思ったのだろう。そういう歯車の噛み合ぬ作業をしばらく繰り返し結局店に着いたのは予定より30分も遅れてしまった。

有名なところだと思うのですが、と言ったオレにはその店が本当に有名なのか何の確証もなかったのだが、実際店に着いてみると、住宅街のはずれの古民家を改装したような洒落た店で、有名な店というよりは知る人ぞ知る隠れ家的な構えの店で、店内はムーディーなジャズボーカルが流れ、読書しながら酒を飲むような1人客がちらほらいるばかりで、極めて静粛としている。その店内の様子(空気)を読み取って、姉はオヤジが酔っぱらって話し声が大きくなることを憂慮していた。それに気づいてオレは、オヤジが興奮して大きな声を出すと、ちょっとお父さん、と声をかけて姉と二人して人差し指を口の前に立てる仕草をした。オヤジもそれでやっと自分の興奮の度合いに気づいて苦笑いして静かになるが、日本酒が効いているのだろう、すぐに忘れてまたオレたちに注意されるということを繰り返した。

日本酒が相当にきいたらしくオヤジは帰りの電車の中で爆睡し、田無駅から自宅までの帰途も千鳥足だった。帰宅後に3人で、今日オヤジが昼間に勤務先で行なわれていた文化祭でゲットしてきたというカップケーキ(明らかにマフィンだと思うがそういう名前じゃなかったとオヤジは言い張った)を、紅茶と一緒に召し上がった。そば屋で飲んだ少量のビールと少量の梅酒と、今食った甘い菓子のせいでオレの脳みそは弛緩し眠気が襲ってきた。そういえばさっき(東村山の駅のホームで電車を待っている時)RYO君から着信があって「長尾くん、今晩何やってるんスカ」と、今晩RYO君が出る久米川のイベントの告知を受けたことを思い出し、久米川はウチから近いことだし車で行けるし、遊びに行こうと思ったことも思い出し、それならその前に一眠りしよう。

結局12時ゴロ目覚めて身支度して実家を抜け出し、大活躍のトヨタのノアに乗り、旧青梅街道をグングン下って行く。遊びに行くのだとういのに、都心とはまったく正反対の方向に向かい、住宅地が次第に次第に閑散としていく景色を窓越しに、音楽を効きながら優雅にドライブをする、というのは何とも贅沢な気持ちだ。久しぶりにスピンさせるチェ・スダカのミランダ・アル・ムンド・アル・レベスに大声で合唱しながらアスファルトを蹴散らしていくのはちょっと切なく、かつ爽快であった。

早朝6時に久米川から帰宅しベッドに倒れると次に気づいたら正午12時。今日は特別な予定がないはずだったが、夕方から姉貴と買物に行くということに、昨日の東村山での晩餐の最中急遽決まったのだ。だからそれまでの間ブログを更新しようと、やっとパソコンに向かってキーボードを叩きつけることになった。この土日はクラッチが目出たいことになったのを歓迎して赤い疑惑の練習はお休みなのであった。
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