妙齢のオンナの人に
「玄ちゃん、妙齢のオンナの人に、そんなに簡単に好きなんて言ったらダメだよ」
Sちゃんは、そう言うのだった。Sちゃん、というのはオレがフライング気味にアタックしてしまった女性なのだ。玄ちゃん、というのはオレのことだ。
オレは、(そうか、妙齢のオンナの人に簡単に恋をしたらダメなんだな)と思った。そう言われてみれば確かに、そんな気がしてしょうがない。妙齢のオンナの人は、ケッコンだ、出産だ、安定した収入だ、と望む人が多いのはオレも知っているのだ。
「だから、このままトモダチのままの方がいいんだよ」
Sちゃんは落ち着き払ってそんな風に言っている。年下のオレをなだめるかのような口調だ。ナニクソ。
「そうだよねー。オレもそう思います」
ナニクソとは思ったが、実はオレもフライング気味にアタックしてしまったことを、後悔はしないまでも自覚するに至っていたのであっさりSちゃんの提案に同意してしまったのだ。オレは何だか可笑しくなって、もう一度「やっぱ、そうだよねー」と、Sちゃんに、というよりはむしろ自分を納得させるかのように繰り返してみて、ククク、と笑ってしまった。Sちゃんはそんなオレを見ても冷静で、笑い事じゃないよ、とでもいたげだったが、その後は普通に楽しいお酒を飲んだのだった。
それからというもの、「妙齢のオンナの人に、そんな簡単に好きなんて言ったらダメだよ」が、ふとした瞬間に何故か頭をよぎることがあった。なんというキラーフレーズだろう、と繰り返す度に思われるのが不思議だったが、そんな風にそのキラーフレーズを思い出したとある瞬間、オレは前に付き合っていた彼女のことを思い出して愕然としたのだった。アイツも苦労しているに違いない。オレはすべての妙齢のオンナの人達に申し訳ない気分になってしまった。勘弁してくれよ。
「そういえば玄ちゃん、ブログで書いてたアレは…」と言うのは助手席に座っているアヒルだ。オレは何故かその夜アヒルを国分寺に送り届けることになっていたのだ。ブログで書いてたアレというのはオレの恋沙汰のことらしい。やっぱり恋のあれやこれやというのは万人に受け入れられるのだなと思わずにいられない。オレは「トモダチのままで」というのになったのだということを簡潔に話した。すると簡潔に話した後はアヒルの独壇場であった。アヒルとはよくぞ自称したものだ。このオトコはよく喋るぜ。
アヒルを国分寺に送り届けたのが夜中の二時前だった。オレは踵を返して名前の知らない道をひたすら北上して五日市街道を右折。知ってる道なので少しアクセルを強めに踏んで、(今日のライブはやっちゃったなー)と、その日の赤い疑惑ライブのことを改めて噛みしめてみた。その日のライブはロックの神が降りてこなかった。ステージ衣装をライブハウス内で紛失した時、オレは神に見放されたような気分になって、正直テンションがガタンと落ちてしまったのだ。それをロックの神が降りてこなかった、だなんてヌカすのはフテえ魂胆だぜ。
そんなことをただボウッと考えてたら家に着いた。またいつものように機材やらステージ衣装やら物販やら一式を狭い部屋の中でゴソゴソと片付けて、身体は疲れているのに妙に頭は冴えている。この頭のエネルギーを何かにぶつけたいけど、その前にちょっと横になって考えようと思っていたらそのまま寝てしまった。
Sちゃんは、そう言うのだった。Sちゃん、というのはオレがフライング気味にアタックしてしまった女性なのだ。玄ちゃん、というのはオレのことだ。
オレは、(そうか、妙齢のオンナの人に簡単に恋をしたらダメなんだな)と思った。そう言われてみれば確かに、そんな気がしてしょうがない。妙齢のオンナの人は、ケッコンだ、出産だ、安定した収入だ、と望む人が多いのはオレも知っているのだ。
「だから、このままトモダチのままの方がいいんだよ」
Sちゃんは落ち着き払ってそんな風に言っている。年下のオレをなだめるかのような口調だ。ナニクソ。
「そうだよねー。オレもそう思います」
ナニクソとは思ったが、実はオレもフライング気味にアタックしてしまったことを、後悔はしないまでも自覚するに至っていたのであっさりSちゃんの提案に同意してしまったのだ。オレは何だか可笑しくなって、もう一度「やっぱ、そうだよねー」と、Sちゃんに、というよりはむしろ自分を納得させるかのように繰り返してみて、ククク、と笑ってしまった。Sちゃんはそんなオレを見ても冷静で、笑い事じゃないよ、とでもいたげだったが、その後は普通に楽しいお酒を飲んだのだった。
それからというもの、「妙齢のオンナの人に、そんな簡単に好きなんて言ったらダメだよ」が、ふとした瞬間に何故か頭をよぎることがあった。なんというキラーフレーズだろう、と繰り返す度に思われるのが不思議だったが、そんな風にそのキラーフレーズを思い出したとある瞬間、オレは前に付き合っていた彼女のことを思い出して愕然としたのだった。アイツも苦労しているに違いない。オレはすべての妙齢のオンナの人達に申し訳ない気分になってしまった。勘弁してくれよ。
「そういえば玄ちゃん、ブログで書いてたアレは…」と言うのは助手席に座っているアヒルだ。オレは何故かその夜アヒルを国分寺に送り届けることになっていたのだ。ブログで書いてたアレというのはオレの恋沙汰のことらしい。やっぱり恋のあれやこれやというのは万人に受け入れられるのだなと思わずにいられない。オレは「トモダチのままで」というのになったのだということを簡潔に話した。すると簡潔に話した後はアヒルの独壇場であった。アヒルとはよくぞ自称したものだ。このオトコはよく喋るぜ。
アヒルを国分寺に送り届けたのが夜中の二時前だった。オレは踵を返して名前の知らない道をひたすら北上して五日市街道を右折。知ってる道なので少しアクセルを強めに踏んで、(今日のライブはやっちゃったなー)と、その日の赤い疑惑ライブのことを改めて噛みしめてみた。その日のライブはロックの神が降りてこなかった。ステージ衣装をライブハウス内で紛失した時、オレは神に見放されたような気分になって、正直テンションがガタンと落ちてしまったのだ。それをロックの神が降りてこなかった、だなんてヌカすのはフテえ魂胆だぜ。
そんなことをただボウッと考えてたら家に着いた。またいつものように機材やらステージ衣装やら物販やら一式を狭い部屋の中でゴソゴソと片付けて、身体は疲れているのに妙に頭は冴えている。この頭のエネルギーを何かにぶつけたいけど、その前にちょっと横になって考えようと思っていたらそのまま寝てしまった。
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