野暮天のバンドマン
一昨日インディーズマガジンのイベントでDJをやって、その時インディーズマガジンの最新号をもらったのでパラパラと目を通していたら、「ライブハウスの現状」的な内容の対談があって、それを読んでて、「ライブハウスが急増してて横並びになってる」というような内容のくだりがあって、そうそう、確かにそうなんだよな、と同意してしまった。ライブハウスが無個性化してて面白くない、と書いてある。そうなんだよ。バンドとは関係ない生活を送っている人にはどうでもいいことなんだろうけど、オレみたいにライブハウスを活動拠点としているような人間にしてみれば切実なことなんだよ。ちょっとは心配してくれよ。
ライブハウスは非日常的で面白い空間、というバブルの時代においてそうであったようなライブハウスの秘境然とした認識はすでになくなってしまったのに、白無垢の無印良品的なライブハウスが急増しているのだ。それは保守的なライブハウスビジネスがまかり通ってしまっている証なのであって、そういったライブハウスの増殖は、不況だ、不況だ、とウルサい時代において尚更異常なことだと考えざるをえない。そうではありませんか。
何でライブハウスビジネスが儲かるのかっていうのは、どうもライブハウスのチケットノルマ制度(バンドがライブハウスに払う税金)だったり、時代性にそぐわない入場料やドリンク代の設定だったりするのだと思うのだけど、後者の金額的な問題は切実で、大体東京のライブハウスの相場の入場料である2000円という金額が現実的じゃない。そりゃ、いい音楽だったり、楽しい空間だったり、何か魅力がありゃそりゃ2000円だって高くないけどね。ドリンク代だってウマいドリンクだったら500円出しても目をつぶってやるけどね。
ところで時々訳の分からない組織から定型のメールで、宛名だけ「赤い疑惑様」とかいうふうに適当に上書きして、「テレビに出て夢をつかみませんか」とか「このイベントに出演して各メディアでアピールしてみませんか」とかいう内容のメールが来ることがあるんだよ。初めは何だろう、なんて思ってたけど、これだけ長くバンドを続けていると、本当にこんなメールはクソだな、ファックだね、って思って即行削除しちゃう。バカにするんじゃねえ。「成功してやろう」なんていうバチ当たりなことを考えやすい━━まさしくオレもそうだったのだが━━20代前半のバンドマン諸兄には呉々もこういった類のお誘いにはご注意を、と忠告してやりたい。バカなこと考えるんじゃないよ。バビロンシステムに利用されるための、まったく愛情のないご提案なのだよ。まるで自衛隊の勧誘と変わらない。
仕事帰りに久々にみなとさんから電話があって、本当にお久しぶりだったのだけど、お付き合いしていた3、4年前の時の感覚がまだ残っててフランクにいろいろ話してたんだ。
「どうなの。最近、赤い疑惑は?」
「やってますよ。むしろ昔よりもなお一層気合いが入ってます」
みなとさんはそんなオレの声を聞いて快活に笑っている。ヘブンズを辞めてイベンターとして再出発したのだそうで、自分のイベントに赤い疑惑を呼びたいと言ってる。
「いやあね、赤い疑惑も随分長くやってきて、実際名前はすごく知れ渡ってきてるんだけどね、実質的な人気はないんだよねー。集客力全然ないですもん。いまだに」とオレ。
「な~に言ってんのー。赤い疑惑だったら二三十人くらい簡単に集めちゃうんでしょ?」と意地悪なみなと氏。
冗談じゃなくて赤い疑惑の集客はいまだに一桁の日がほとんとだ。これじゃ人気バンドだなんてハッタリだな、まったく。みなとさんが誘ってくれたイベントは平日だったので「平日ですかー。基本的に土日を優先してるんですけど」とオレは答えて、でもそういうのもサムいよなあ、と考え直して「…でもメンバーと相談してお返事します」と言って電話を切った。超久しぶりに話したのになんでこんなに気の置けないバイブスなのだろう、と突然数年ぶりに現れた元ライブハウス・ブッキングマネージャーの存在に少し心が躍るようだった。人間付き合いというのは面白いものなんだ。
夜メールをチェックしてたらノギオから「今度のライブは赤い疑惑周りで何人くらいお客さん来そうですか?」という野暮天な質問がきたので焦った。ノギオというのは今度の地球屋ライブの首謀者でバンドマンだ。いくら集客が心配であってもイベントの出演者にそんなことを聞くイベンターはいないゼ。
そう思いながらオレはさっきみなとさんと話したばかりの赤い疑惑の集客の心もとのなさを振り返り、どう返事をしようかと思ったがサバを読んでもしかたないので、今のところ来るということになっている人数を答えた。撮影のツダ氏を含めて5人である。メールの最後に「集客力なくて申し訳ない」と添えた。
ノギオのアドレスは携帯だったのですぐにオレからのメールに対する返事が来た。そうじゃないんですよ、今度のライブは予想以上にお客さんが入りそうだから地球屋大丈夫かなと思って、というような内容でオレは不意をつかれてしまった。そうか、嬉しい悲鳴ってやつだな、とノギオの悲鳴をオレは受け取った気がした。(沢山お客さんが入るのか、そりゃ~いい)と思った。同時にさっきノギオのメールを野暮天だな、と断じた自分を恥じた。すまなかったノギオよ。土曜日は素晴らしい夜にしようではないか。
ライブハウスは非日常的で面白い空間、というバブルの時代においてそうであったようなライブハウスの秘境然とした認識はすでになくなってしまったのに、白無垢の無印良品的なライブハウスが急増しているのだ。それは保守的なライブハウスビジネスがまかり通ってしまっている証なのであって、そういったライブハウスの増殖は、不況だ、不況だ、とウルサい時代において尚更異常なことだと考えざるをえない。そうではありませんか。
何でライブハウスビジネスが儲かるのかっていうのは、どうもライブハウスのチケットノルマ制度(バンドがライブハウスに払う税金)だったり、時代性にそぐわない入場料やドリンク代の設定だったりするのだと思うのだけど、後者の金額的な問題は切実で、大体東京のライブハウスの相場の入場料である2000円という金額が現実的じゃない。そりゃ、いい音楽だったり、楽しい空間だったり、何か魅力がありゃそりゃ2000円だって高くないけどね。ドリンク代だってウマいドリンクだったら500円出しても目をつぶってやるけどね。
ところで時々訳の分からない組織から定型のメールで、宛名だけ「赤い疑惑様」とかいうふうに適当に上書きして、「テレビに出て夢をつかみませんか」とか「このイベントに出演して各メディアでアピールしてみませんか」とかいう内容のメールが来ることがあるんだよ。初めは何だろう、なんて思ってたけど、これだけ長くバンドを続けていると、本当にこんなメールはクソだな、ファックだね、って思って即行削除しちゃう。バカにするんじゃねえ。「成功してやろう」なんていうバチ当たりなことを考えやすい━━まさしくオレもそうだったのだが━━20代前半のバンドマン諸兄には呉々もこういった類のお誘いにはご注意を、と忠告してやりたい。バカなこと考えるんじゃないよ。バビロンシステムに利用されるための、まったく愛情のないご提案なのだよ。まるで自衛隊の勧誘と変わらない。
仕事帰りに久々にみなとさんから電話があって、本当にお久しぶりだったのだけど、お付き合いしていた3、4年前の時の感覚がまだ残っててフランクにいろいろ話してたんだ。
「どうなの。最近、赤い疑惑は?」
「やってますよ。むしろ昔よりもなお一層気合いが入ってます」
みなとさんはそんなオレの声を聞いて快活に笑っている。ヘブンズを辞めてイベンターとして再出発したのだそうで、自分のイベントに赤い疑惑を呼びたいと言ってる。
「いやあね、赤い疑惑も随分長くやってきて、実際名前はすごく知れ渡ってきてるんだけどね、実質的な人気はないんだよねー。集客力全然ないですもん。いまだに」とオレ。
「な~に言ってんのー。赤い疑惑だったら二三十人くらい簡単に集めちゃうんでしょ?」と意地悪なみなと氏。
冗談じゃなくて赤い疑惑の集客はいまだに一桁の日がほとんとだ。これじゃ人気バンドだなんてハッタリだな、まったく。みなとさんが誘ってくれたイベントは平日だったので「平日ですかー。基本的に土日を優先してるんですけど」とオレは答えて、でもそういうのもサムいよなあ、と考え直して「…でもメンバーと相談してお返事します」と言って電話を切った。超久しぶりに話したのになんでこんなに気の置けないバイブスなのだろう、と突然数年ぶりに現れた元ライブハウス・ブッキングマネージャーの存在に少し心が躍るようだった。人間付き合いというのは面白いものなんだ。
夜メールをチェックしてたらノギオから「今度のライブは赤い疑惑周りで何人くらいお客さん来そうですか?」という野暮天な質問がきたので焦った。ノギオというのは今度の地球屋ライブの首謀者でバンドマンだ。いくら集客が心配であってもイベントの出演者にそんなことを聞くイベンターはいないゼ。
そう思いながらオレはさっきみなとさんと話したばかりの赤い疑惑の集客の心もとのなさを振り返り、どう返事をしようかと思ったがサバを読んでもしかたないので、今のところ来るということになっている人数を答えた。撮影のツダ氏を含めて5人である。メールの最後に「集客力なくて申し訳ない」と添えた。
ノギオのアドレスは携帯だったのですぐにオレからのメールに対する返事が来た。そうじゃないんですよ、今度のライブは予想以上にお客さんが入りそうだから地球屋大丈夫かなと思って、というような内容でオレは不意をつかれてしまった。そうか、嬉しい悲鳴ってやつだな、とノギオの悲鳴をオレは受け取った気がした。(沢山お客さんが入るのか、そりゃ~いい)と思った。同時にさっきノギオのメールを野暮天だな、と断じた自分を恥じた。すまなかったノギオよ。土曜日は素晴らしい夜にしようではないか。
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