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3月21日

名古屋に行った。今回はツダ君が同行した。ツダ君はカメラで赤い疑惑を追いかけているのだ。東名高速までの下道と高速に乗ってからもほぼ断続的に渋滞が続いた。しかし、オレたちにはその状況をどうすることもできず、ただ周りの景色を見ながら話しをして音楽を聞いた。

結局リハには全然間に合いそうもない、ということが分かったが、オレたちは焦らなかった。焦っても仕方がないからである。しかし、主催者は心配しているだろうから一報入れようかな、どうしようかな、と思っていたら逆に主催者から電話がかかってきてしまった。マズいな。オレは渋滞で遅れている旨を伝えたが、主催者はソワソワしているようだった。

いつもはオレの実家の車で移動するのが例だが、今日はオヤジが車を使うというので代打として松田クラッチのオヤジの車が活躍していた。しかしいつもはカーナビがついているのに、松田クラッチのオヤジの車にはカーナビは搭載していないのであって━━それは松田家の男臭い方針に基づいているかららしいのだが、ともかくカーナビがないので、いつもは当り前に頼りにしている「到着予想時間」というのが分からない。いや、そもそもこの渋滞じゃ「到着予想時間」を考えることすら虚しいじゃないか。

主催者から2回目の電話があった。「今、どこですか」と言う。オレは標識を見て、どこそこというところです、と答えるのだが、そのどこそこという地名を主催者は分からないらしく、余計に焦りを露にしている様子。「ちょっと待って下さい」と言って主催者は電話口から遠ざかり、何やらハコのスタッフとあーだこーだ性急に言葉を交わしているようで、突然、オレたちがヒドい悪者のように思えてきた。「とりあえずリハの順番を交えて…」といって主催者は代替策を講じてくれた。「まあ、ゆっくり来て下さい」最後にそう言って電話が切れた。

主催者は学生で、今回のイベントに恐らく、一年か半年くらいの思い入れをぶつけている筈で、経験もないし、呑気なバンドマンと、正常にスケジュールを進めようとするハコのスタッフとの間に挟まれてしまって必要以上にあたふたしている様子だ。その後も何回かやりとりがあり、もういっそのこと赤い疑惑の本番の出番を変えるか、とか、いろいろの経緯を踏んで、結局最後の電話では「とにかく急いで来て下さい!」と、強い語気でぶつけられてしまった。さっきは「ゆっくり来て下さい」とオレたちの安全を気遣ってくれていたのに、ちょっとした間に「急いで来て下さい」という意見に変わってしまっていたのだ。急いで、と言っても渋滞でどうしようもないし、急いで事故にでも遭ったらどうしてくれよう。

オレたちが現場に到着した時はもう日が暮れかかっていた。ライブハウスの前に行列ができていて、それは入場を待つお客さんだった。こんな現象は東京でもオレは久しく眼にしない。しかもオレたちは出演者であって、その客の行列の眼の前を車で乗り付ける様は、正に芸能人のような感じになってしまい、オレたちは非常に恥ずかしい思いをしなければならなかった。寒空の中、けなげに入場を待ちわびて立っているお客さんの目線は、自然と我々に向けられなければならい。すると主催者がバタバタと降りて来て、挨拶もそこそこに搬入などをせっつかれてしまった。オレたちは肩身を狭くして諸々の作業をこなすしかなかった。オレはそれで肩身を狭くし、遅れてしまったことを申し訳ないな、と感じ小さくなりながらも、今日は何としても、リハこそ間に合わなかったけれど、最高のライブをぶちかまして、シメシをつけなければならないゼ、と思うのであった。あれだけ心配してあたふたしていた主催者に、ああ、赤い疑惑を呼んで本当によかったな、と思わせるような、他じゃ誰にも真似できないライブをやってやるしかないぞな、と自分に言い聞かせ、帯を締め直すのである。
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